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マーケティングのインハウス化の進め方|業務棚卸しからKPI会議まで

公開:2026-10-10 / 更新:2026-10-10

内製する業務を決める → 担当者と外部パートナーの役割を決める → 広告・CRM・コンテンツなどを順番に移管する → 週次レビューと月次KPI会議を社内業務にする

マーケティングのインハウス化は、次の4つのフェーズで進めます。

  1. 内製するマーケティング業務を決める
  2. マーケティングチームの役割を決める
  3. 業務を代理店から社内へ移管する
  4. 週次レビューと月次KPI会議を日常業務にする

一度に広告運用・SEO・SNS・制作を全部社内へ移すと、担当者が追いつかず施策が止まります。各フェーズで「内製・外注業務一覧」「役割分担表」「業務移管計画」「KPI管理表・業務マニュアル」を作り、揃ってから次に進みます。

この記事では、インハウス化で社内に残すものと外注してよいものを確認したうえで、4つのフェーズを順に解説します。最後に、止まりやすいつまずきと対策を表にまとめます。

この記事のポイント

  • 進める順は「内製する業務を決める → 役割を決める → 代理店から社内へ移管する → 週次レビューと月次KPI会議を回す」
  • 各フェーズで作るものは「内製・外注業務一覧」「役割分担表」「業務移管計画」「KPI管理表・業務マニュアル」
  • 移管した業務は、社内で「仮説→実行→CPA・CV数・商談数の振り返り」を2回まわせるまで代理店契約を残し、その後は依頼内容を作業委託からレビュー・相談へ変える

インハウス化とは

インハウス(in-house)は「社内の」という意味の言葉です。外部に発注していたマーケティング業務を社内に移すことを「インハウス化」「内製化」と呼びます。

すべての業務を社内だけで完結させる必要はありません。テレビCMのように媒体社が代理店経由でしか受け付けないものもあります。先に決めるのは、社内で判断・記録するものと、代理店・制作会社に任せてよい作業の線引きです。

社内で判断・記録するもの 代理店・制作会社に任せてよいもの
マーケティングのKGI・KPI(新規商談数、CPA、リピート率など) 媒体への出稿作業
ターゲット、提供価値、競合との差、チャネルの優先順位 デザイン・動画などの制作
予算配分と施策のGo/No Go SEOの技術実装、広告の入札・配信オペレーション
週次・月次の成果確認と改善判断 セカンドオピニオン(四半期レビューなど)
顧客インタビューログ、失注理由、反応の良い広告クリエイティブの記録 最新の媒体仕様・キャンペーン情報の収集

左の列が社内にあれば、出稿や制作の一部を外部に頼んでいても、インハウス化は進んでいると言えます。

全体像

4つのフェーズは、前のフェーズで作った表や計画を次で使う順番です。たとえばフェーズ2の役割分担表は、フェーズ1の内製・外注業務一覧がないと作れません。

【図1】インハウス化の進め方。4つのフェーズと、各フェーズで決めることと作るもの
【図1】インハウス化の進め方

以下、フェーズごとに「何を決めるか」と「何を作るか」を解説します。

フェーズ1|内製するマーケティング業務を決める

広告運用、SEO、SNS、CRM、顧客調査、効果測定などを棚卸しし、内製と外注を決めます。ここで作るのは、「インハウス化の目的」と「内製・外注業務一覧」の2つです。

最初に、マーケティングの成功指標と担当範囲を書く

目的を決める前に、社内で「マーケティング」「マーケター」が何を指すかを揃えます。意味が曖昧なまま移管すると、担当者の時間は広告の入札調整、SEOの順位確認、SNS投稿に偏り、ターゲットや提供価値を決める会議が減ります。

【図2】部分最適が生まれる流れ。定義が曖昧なまま進むと、仕事が個別の施策に偏り、細かい調整がマーケティングの業務になる
【図2】部分最適が生まれる流れ

「自社にとっての成功は何か(売上、新規商談数、継続率など)」「マーケターはCPA・CVR・商談化率のどこまで責任を持つか」を1枚に書いてから、インハウス化の目的に進みます。

インハウス化の目的を1つに絞る

インハウス化の目的は、大きく3つに分けられます。どれを優先するかで、先に移管する業務が変わります。

目的 現場で起きること 先に移管する業務
手数料コストを減らす 代理店・制作会社へのマージンが減る 手数料比率の高い運用型広告
施策の着手を速くする 社内チャットと承認だけでLP修正・配信ができる SNS運用、LP修正、メール/MA配信
顧客データと施策結果を社内に残す 仮説・施策・結果がNotion等にたまる 顧客インタビュー、失注理由の記録、月次の効果測定

3つとも欲しくなる会社は多いですが、最初の1年は1つに絞ります。目的が複数だと、採用要件も、代理店との契約見直しも定まりません。

業務ごとに内製/外注を決める

いま代理店や制作会社に頼んでいる業務を一覧にし、社内アカウントで回せるかを判断します。

業務 社内に移せるか 判断のポイント
テレビCM・ラジオCM・新聞・雑誌・交通広告 移せない 媒体社が広告代理店を通して受け付けている
大規模サイトの純広告(Yahoo! JAPAN・YouTubeのトップページ枠など) 移せないものが多い 代理店経由でしか出稿できない枠がある
運用型広告(検索・SNS・ディスプレイ) 移しやすい 少額から自社の広告アカウントで出稿できる
SNS運用・コンテンツ制作 移しやすい 担当者1名から始められる
Webサイト・LPの制作 担当者がいれば移せる ページ数と更新頻度で工数を見積もる
SEO・LPO・EFO 経験者がいれば移せる SEOはコンテンツ制作を指す人もいれば、サイト構造やHTML改善を指す人もいる。担当者がどこまで対応できるかを先に確認する
顧客調査・効果測定(GA4・CRM・広告管理画面) 移しやすい CPA、CVR、商談化率を月次で見られるほど、次の施策判断に使える

「移せない」業務は、インハウス化の後も代理店に依頼する前提で予算を組みます。

フェーズ2|マーケティングチームの役割を決める

マーケティング責任者、実務担当者、代理店・制作会社の役割と責任範囲を決めます。ここで作るのは、「役割分担表」と「担当者の採用・育成計画」です。

役割を3つに分けて書く

少人数でも、役割としては次の3つに分けて書き出します。1人が2つを兼ねても構いません。

役割 担うこと 置き方の目安
マーケティング責任者 KGI・予算・優先順位のGo/No Go 経営者またはマーケティング部門の長
実務担当者(広告運用・CRM・コンテンツなど) 施策の企画・実行・週次の数字確認 移管する業務の数に合わせて1〜数名
外部パートナー(代理店・制作・SEO会社) 内製しない作業、専門オペレーション、外からのレビュー フェーズ1の内製・外注業務一覧に合わせて契約を見直す

担当者を採用するか、社内で育てるか

担当者の確保は、採用か育成かの2つです。インハウス化では、社内で育てる側を基本にし、将来のCMOを社内から育てることを目指します。

【図3】CMO育成の選択肢。社内で採用・育成するか、外部に委託するか。黒はこの記事で扱う進め方
【図3】CMO育成の選択肢

社内で進める場合の進め方は、次の2つです。

  1. 経験者を採用する すぐに広告アカウントやCRMを移管できる一方、採用に時間がかかります。「マーケティング経験」でも専門は広告運用・SEO・SNS・CRMなどに分かれるため、移管したい業務と経験が一致しているかを面接で確認します。
  2. 社内のメンバーを育てる 自社の商品と顧客を知っている人が担当になれます。関心のあるメンバーを実務担当に置き、研修や外部伴走で、広告管理画面・GA4・CRMの実務をOJTします。研修は、移管したい業務(例:検索広告と月次レポート)に合わせて内容を組めるものを選びます。

多くの会社では、2を基本にし、専門性の高い領域だけ1で補います。

フェーズ3|業務を代理店から社内へ移管する

内製・外注業務一覧で「内製する」とした業務を、1つずつ社内へ移します。ここで作るのは、「業務移管スケジュール」と「完了の記録(誰が・いつ・どのアカウントを引き継いだか)」です。

移管する順番を決める

順番は「移しやすさ」と「目的への影響」で決めます。

  1. 移しやすく、目的への影響が大きい業務から始める(例:目的が「顧客データと施策結果を社内に残す」なら、GA4/CRMの月次確認と失注理由の記録)
  2. 次に、移しやすいが影響の小さい業務で担当者の経験を積む(例:SNS投稿、LPの文言修正)
  3. 最後に、経験者や育成が必要な業務を移す(例:SEOの技術面、広告アカウントの設計・入札戦略)

1つの業務を移している間は、代理店との契約を残します。社内で回らなかったときに、すぐ戻せるようにするためです。

移管完了の基準を先に書く

「いつ代理店契約を見直せるか」を先に決めておきます。目安は、社内メンバーで「仮説を立てる → 施策を実行する → CPA・CV数・商談数を振り返る」を2回まわせたことです。1回目は代理店に並走してもらい、2回目は社内だけで完結させます。2回目を終えたら、その業務の外部契約を見直します。

フェーズ4|週次レビューと月次KPI会議を日常業務にする

移管した業務が、担当者の異動や退職で止まらない状態にします。ここで運用を始めるのは、週次レビュー、月次KPI会議、施策記録、業務マニュアル、顧客データの置き場所です。

1. 広告クリエイティブと失注理由を1人に溜めない

社内で回すと、反応の良い広告クリエイティブや顧客の声が特定の担当者に集まりがちです。その人が休む・退職すると、配信やレポートが止まります。次の3つを用意します。

  • 毎週30分、マーケティング責任者と実務担当者がCPA・CV数・商談数を確認する週次レビュー
  • 業務マニュアル(広告出稿、CRM更新、レポート作成など、誰が読んでも同じ作業ができる粒度)
  • 仮説・施策・結果・失注理由・顧客インタビューログをNotion等の1か所に残す(AIで検索・要約できる形だと引き継ぎが短い)

2. 媒体の新機能を追う時間を決める

広告代理店には領域ごとの専門部署があり、媒体社と定期会議をしています。社内の1〜数名で同じ幅を追うのは難しいため、媒体の公式発表やニュースの収集・要約はAIに任せ、担当者は「自社のCPAや商談に使えるか」の判断に時間を使います。

3. 代理店への依頼内容を変える

移管後も、代理店や支援会社に意見を求める会社は少なくありません。日々の出稿作業の委託から、四半期に1回の施策レビューや、新しい媒体を試すときの相談へと、依頼の中身を変えていきます。

4. 仕事の進め方(調査→仮説→実行→KPI確認→改善)を手順に入れる

業務マニュアルが「1つの作業のやり方」だとすると、マーケティングパターンは「どの場面で、どの順番で動くか」を書いたものです。顧客調査→仮説設定→施策実行→KPI確認→改善、という流れを、調査・戦略・設計・実行・計測と改善の5つの場面と、どの場面でも使う組織づくりに分けて示します。

【図4】マーケティングパターン。調査・戦略・設計・実行・計測と改善の5つの場面と、どの場面でも使う組織づくり
【図4】マーケティングパターン(一部)

進め方は3つです。

  1. フェーズ1の内製・外注業務一覧で「内製する」とした業務を、5つの場面に当てはめる
  2. 場面ごとに、まだ社内で答えられていない問いを2〜3個選び、対応するパターンを業務マニュアルに入れる
  3. どの場面でも、情報を社内共有する方法、会議体、外部の手を借りる範囲を書き出しておく

50のパターンの一覧と、それぞれの問い・手順・完了の状態は、マーケティングパターンで紹介しています。

つまずきやすい点と対策

インハウス化が止まる会社には、共通する止まり方があります。起きやすいフェーズと対策です。

つまずき 起きやすいフェーズ 対策
目的が複数あり、移管する業務が絞れない フェーズ1 最初の1年の目的を1つに決め、内製・外注業務一覧をつくり直す
広告・SEO・SNSを一度に移管し、担当者の手が回らない フェーズ1・3 移しやすく影響の大きい業務1つから始める
経験者を採用したが、専門が移管したい業務と合わない フェーズ2 採用前に、移管業務と求める経験(例:検索広告+GA4)を書き出して照合する
代理店契約を先に終え、社内で回らなかったときに戻せない フェーズ3 2回まわせるまで契約を残す
担当者が退職し、配信やレポートが止まる フェーズ4 週次レビュー、業務マニュアル、施策記録の置き場所を用意する
媒体の新機能や仕様変更に気づくのが遅れる フェーズ4 情報収集をAIに任せ、四半期に1回は代理店にレビューを依頼する

まとめ

この記事のポイントは3つです。

  1. 進める順は「内製する業務を決める → 役割を決める → 代理店から社内へ移管する → 週次レビューと月次KPI会議を回す」
  2. 各フェーズで「内製・外注業務一覧」「役割分担表」「業務移管計画」「KPI管理表・業務マニュアル」を揃えてから次に進む
  3. 移管した業務は、社内で「仮説→実行→CPA・CV数・商談数の振り返り」を2回まわせるまで代理店契約を残し、その後は依頼内容を作業委託からレビュー・相談へ変える

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