Systemic Marketing
システミックマーケティングの考え方
システム思考の視点から、マーケティング課題を「木」ではなく「森」として捉える。 地域プロジェクトでも活用している、全体構造を可視化するためのものの見方を整理します。
Basics
システム思考の基礎 ─ 木ではなく森を見る
システム思考は、マーケティング課題を「木」ではなく「森」として捉えるためのものの見方です。 私たちはふだん、問題が起きたときに次のように考えがちです。
- 売上が落ちた。もっと広告を打とう。
- 離職が増えた。採用を強化しよう。
これは、目の前で起きた 「出来事(イベント)」だけを見る考え方です。
一方で、システム思考はこう問いかけます。 「この結果が出るような『仕組み(構造)』が、もともとどんなふうにできていたんだろう?」
表に出てきた結果だけでなく、 その前に続いていた振る舞い・パターン、 さらにその奥にある構造・仕組みまでさかのぼって考える──これがシステム思考の出発点です。
木 = 目の前の問題・KPI・トラブル
森 = その問題を生み出している、組織全体・市場全体の構造
システム思考は、「木」と「森」をセットで見る「見方のクセ」を育てるための考え方です。
Mindset
核心となる考え方 ─ ツールではなく「ものの見方」
システム思考は、便利なダイアグラムツールのことではありません。日常の会話・会議・メモの中で、 「今、イベントだけ見ていないか?」「構造レベルの話ができているか?」と自分に問いかけるクセづけのことです。
システミックマーケティングは、このシステム思考の土台の上に、 「市場・組織・顧客・プロダクト」の関係性をセットで眺めながら、全体最適な打ち手を考えるアプローチです。
Three Layers
「構造 → 振る舞い → 結果」の3つの層で見る
システム思考では、物事を次の3つの層に分けて考えます。
1. 結果・現象(Event)
目に見えて「起きたこと」そのもの
例:CVRが下がった、有料転換率が落ちた、離職率が上がった。ここだけを見て「何とかしよう」とするのが、 ふだんの意思決定のクセです。
2. 振る舞い(Behavior)
時間の中でどんな変化パターンがあったか
例:ここ半年で特定の顧客セグメントだけ徐々に継続率が下がっていた、あるチャネルだけCPAがじわじわ上がっていた。 グラフでいうと「ある一点」ではなく、線やカーブとしての変化の様子です。
3. 構造(Structure)
仕組み・ルール・関係性のつくり方
例:評価制度(どんな行動が評価されるか)、インセンティブ(どこに報酬がつくか)、部署間の役割分担や情報の流れ、 暗黙のルールや文化など。システム思考では、「結果がおかしい」と感じたときに、この構造レベルまで潜って考え直すことを目指します。
Core Concepts
システムを描くためのキーワード
要素(変数)とは?
システムの中で「増えたり減ったりするもの」。数字(新規顧客数、CVR、LTV、在庫量、広告費など)だけでなく、 状態(顧客の満足度、不安の強さ、社内の信頼感、モチベーションなど)も含まれます。
「この問題に関係していそうなもの・状態を名詞で書き出したもの」が要素です。 メンタルモデル(こういうときはこうするものだ、という思い込み)も重要な「見えにくい要素」です。
因果関係(Causal Link)とは?
「Aが変わると、Bがどう変わるか?」というつながりです。広告費が増えると認知が増える、 認知が増えると資料請求が増える、などのプラスの関係もあれば、キャンペーン頻度が増えるほどブランドのありがたみが薄れる、といったマイナスの関係もあります。
システミックマーケティングでは、この因果関係を一本ずつ言葉で確認しながらマップにしていきます。
フィードバックループとは?
ぐるっと一周して、自分に戻ってくる輪っかのことです。たとえばサービス品質が上がると口コミが増え、 口コミが増えると新規顧客が増え、売上が増えることでさらにサービス投資ができる──という強化のループ。
一方で、値引き依存でブランドが弱り、さらに値引きせざるを得なくなるような悪循環のループもあります。
レバレッジポイントと遅れ
レバレッジポイントとは、システム全体に効く「てこの支点」となるポイントです。仕組み全体の流れを変えるには、 どこを変えると一番効くのか?を探します。
また、多くの施策には「遅れ(タイムラグ)」があります。打った施策がすぐには数字に現れないことを前提に、 短期のイベントではなく中長期の振る舞いで評価する視点が重要です。
Example
イベント視点 vs システム視点
Event View
よくあるイベント視点
「先月、CVRが落ちた。広告クリエイティブを変えよう」── 目の前の数字の変化だけを見て対処しようとする考え方です。
System View
システム視点で見ると
- 結果:有料転換率が3ヶ月で 15% → 8% に低下。
- 振る舞い:特定セグメントのみ継続的に悪化。トライアル開始後「2週間目」で離脱が増えている。
- 構造:オンボーディングのステップ数が増え、担当者の負担が大きい。社内で説明するための資料がなく、担当者が孤軍奮闘している。
このレベルまで見えたとき、打つべき手は「広告クリエイティブの改善」だけではなく、 オンボーディング設計や営業・CSとの連携改善へと変わっていきます。
Regional Projects
地域を「システム」として見る
なぞるの地域プロジェクトでは、地域を構成する要素(住民・観光客・事業者・行政・インフラ・伝統産業など)の関係性を システムとして捉え、課題と機会の全体像をマップ化しています。
一つのイベント(例えば来訪者数の増減)だけを見るのではなく、 その裏にある振る舞いのパターン、そして歴史や産業構造・政策・文化といった構造要因までを一体で捉え、 「どこにレバレッジポイントがあるか?」を探していくのがシステミックマーケティングです。