途中の数字が、目的になる。
CPA(問い合わせなど1件を獲得する費用)を下げることや、SNSのインプレッション(表示回数)を増やすことだけが目標になる。受注しにくい問い合わせや、対象顧客以外への表示が増えても、評価は良くなる。
CPAや表示回数を、商談・受注・粗利などの事業の数字とつなぐ。広告の成果を見るときに、営業の対応量や顧客の質も一緒に確かめる。
広告も、営業も、商品開発も頑張っている。
それでも、事業の数字が変わらない。
経営からは成果を求められ、現場は手いっぱい。
何が課題なのか、どこから見直すべきか。
顧客の反応や現場の判断をたどり、同じ問題が繰り返される理由を一緒に整理します。
システミックマーケティングとは、顧客理解・商品開発・営業・マーケティングを、事業全体の成果につながるように設計・改善する考え方です。
たとえば、広告からの問い合わせが増えても、営業が対応しきれなければ受注にはつながりません。営業が聞いた不満が商品開発に届かなければ、同じ理由で失注し続けます。
「誰に、どんな価値を届けるか」をそろえ、情報の渡し方、仕事の順序、判断する数字まで一緒に見直します。その前に、なぜ今の判断や行動が繰り返されているのかを確かめます。原因を一つに決めつけず、関係者と仮説を持ち寄り、改善する箇所を探ります。
「売上が伸びない」は、目に見える結果です。その理由は、集客の不足かもしれませんし、商品の条件、顧客の期待とのずれ、評価制度、施策を判断する時期にあるかもしれません。まず、何が起きているかを確かめ、背景にある関係を描きます。
どの商品で、どの顧客に、何が起きているか。数字と実際の顧客の声を集め、事実と推測を分ける。
いつから、何を変え、その後どうなったか。一時的な変化か、繰り返す傾向かを確かめる。
どの目標や評価が行動を促したか。ほかの活動への影響や、結果が表れるまでの時間差も考える。
集まる顧客が変わったのか。営業が対応しきれないのか。提案と顧客の期待がずれているのか。それとも、受注までに時間がかかるのか。顧客の反応、数字の推移、現場の判断を照らし合わせ、どの説明が実態に合うかを確かめます。
関係を図に描くことで、部門によって違っていた見方を持ち寄れます。図の矢印は、最初は仮説です。記録や小さな実験を通じて確かめ、見方そのものも更新します。
この掘り下げ方は、黒澤友貴のnote「システミックマーケティング〜部分最適→全体最適のマーケティング実践へ〜」(ご提供原稿)をもとに構成しています。
目標の置き方や情報の持ち方は、背景を探る手がかりです。ここでは二つの例を紹介します。自社にも当てはまるかは、顧客や現場の事実から確かめます。
CPA(問い合わせなど1件を獲得する費用)を下げることや、SNSのインプレッション(表示回数)を増やすことだけが目標になる。受注しにくい問い合わせや、対象顧客以外への表示が増えても、評価は良くなる。
CPAや表示回数を、商談・受注・粗利などの事業の数字とつなぐ。広告の成果を見るときに、営業の対応量や顧客の質も一緒に確かめる。
広告担当は獲得数、営業は商談の内容、経営は売上を見ている。顧客の声や失注理由、過去に試した施策の知識も別々の場所にあり、同じ前提で話せない。
数字の定義と集計期間をそろえ、顧客の声・施策の結果・判断の理由を共通の場所に残す。必要な人が参照し、次の仕事で使えるようにする。
CPAや表示回数自体が悪いわけではありません。事業の成果とのつながりを確かめず、その数字だけで判断することが問題です。
個人や各部門が「自分の利益(合理的行動)」を追求して共有資源を使い続けた結果、最終的に資源が枯渇し、全体が共倒れになる現象です。
マーケティングの現場にも、似た構造があります。複数の商品部門がそれぞれ問い合わせを増やすと、共通の営業チームに対応が集中します。各部門の獲得目標は達成できても、営業の時間を使い切れば、どの商品も提案の質が下がります。
※上記は構造を説明するための仮想例です。共有地の悲劇は必ず起きるものではありません。ここでいう「負のループ」は悪循環を意味し、因果関係としては問題を増幅する循環です。
有効な問い合わせの条件をそろえる。営業が対応できる量を共有する。商品部門をまたいで優先順位を決める。受注率や対応時間を見ながら、集客量と営業体制を一緒に調整します。部門の目標だけでなく、共通の資源をどう使い、どう回復・拡充するかまで設計します。
考え方の参考:The Systems Thinker「Systems Archetypes I」。図と事例は、マーケティングの現場に置き換えた独自の説明です。
全員で同じ会議に出るだけでは、仕事はつながりません。誰のための仕事か、何を成果とするか、次の担当者に何を渡すかを決めます。
購入・失注の理由を聞く。
残すもの:困りごとと根拠
解決する課題を選ぶ。
残すもの:提供する価値と条件
商品・提案・発信を小さく試す。
残すもの:実施内容と顧客の反応
受注・継続と現場の負担を見る。
残すもの:次に変える点と理由
図は基本の流れです。実際の仕事では、各部門が行き来しながら見直します。
売上・粗利・継続率など、今回動かしたい事業の数字を決める。
必要な情報・担当者・期限・保存場所を決める。
同じ定義の数字を見て、続ける・変える・やめるを決める。
まずは一つの商品、一つの顧客群、一つの困りごとに絞ります。営業が聞いた話から仮説をつくり、実際の提案やページで確かめます。
「良さそう」という社内の感想で終わらせず、顧客が何を言い、どう行動したかを記録します。うまくいかなかった理由も、次の改善に使える知識です。
誰の、どの困りごとを変えるのか。何が起きたら手応えがあると言えるか。
担当・期間・対象・予算を決める。変更点を絞り、比較できる記録を残す。
数字と発言を照らし合わせる。少数の反応だけで断定せず、次に確かめることを決める。
脱属人化は、手順書を置いて終わりではありません。日々の仕事で参照し、結果を戻し、更新するところまで決めます。AIも、その流れの中に組み込みます。
| 整えるもの | 現場で行うこと | 社内に残すもの |
|---|---|---|
| データ同じ事実を見る | 問い合わせ・商談・受注の定義と集計期間をそろえる。顧客の発言は日時と背景も記録する。 | 指標の定義表、顧客の声、共通の集計表 |
| 業務プロセス同じ手順で進める | 入力する情報、作業の順番、確認する人、完了の条件を決める。例外の扱いも残す。 | 業務手順書、依頼書、判断のチェック表 |
| AI整理と下書きを助ける | 記録の分類、集計の補助、提案の下書きを任せる。人が元の情報を確認し、優先順位と最終判断を決める。 | AIへの指示書、参照する資料、確認・修正の記録 |
| 振り返り次の仕事を良くする | 週次で施策を確認し、月次で事業の数字と照合する。手順書を更新する担当と日付を決める。 | 実験の結果、判断の理由、更新した手順書 |
AIに渡す情報は、社内の利用ルールと閲覧権限に合わせます。顧客の発言や数字をAIが補っていないか、元の記録と照合します。
課題がまだ言葉になっていなくても、今起きていることから始められます。次の手順を行き来しながら、原因の仮説と改善策を具体化します。
困っている場面、事業の目標、数字の推移、顧客の声を持ち寄る。「何を良くしたいか」と、まず調べる範囲を仮に決める。
経営・営業・開発などの目標、評価、判断の理由を聞く。施策の前後で何が変わったかを時間に沿って整理する。
活動同士の影響、顧客の反応、情報の流れ、時間差を図にする。事実で確かめられた関係と、まだ仮説の関係を分ける。
目標、評価、商品条件、情報共有、資源の配分などから、影響が大きそうな箇所を選ぶ。期待する変化と副作用、確認する時期を決める。
対象と予算を絞って実行する。短期の数字だけで結論を出さず、想定した時間差や、ほかの部門への影響も確認する。
結果を受けて、関係図と改善策を見直す。確かめられた進め方を手順書にし、AI・データの使い方や役割分担に反映する。
上記は導入の進め方の例です。期間と対象範囲は、事業や体制に合わせて調整します。
顧客理解から戦略、業務の進め方、人とAIの役割まで。自社の題材を使い、社内で判断し、改善を続けられる形を一緒につくります。
今困っている場面からお聞かせください。状況を伺い、起きていることと推測を分け、最初に確かめる問いを整理します。一度の相談で根本原因を断定せず、何を調べる必要があるかを一緒に考えます。
最初の棚卸しや、顧客の声の整理から始められます。ただし、営業への引き渡しや商品条件を変える場合は、関係する担当者と決める必要があります。まず一つの課題について、判断できる人と実行する人に参加してもらいます。
共通の表や既存の会議から始められます。情報の定義と業務の手順をそろえ、どの作業をAIに任せると役立つかを確かめてから、必要な仕組みを整えます。
始める前に、今回変えたい事業の数字を決めます。商談化率などの途中の数字と、売上・粗利・継続率などの結果を組み合わせて見ます。顧客の反応と現場の負担も確認し、件数が増えただけで成功とは判断しません。